「変な宗教に入るな」と育てられた、東大卒サリン実行犯
エリート青年はなぜ、地下鉄でサリンを撒いたか?
■「死ぬとどうなるのかを確かめたい」
豊田は昭和61年に東京大学に入学したが、しばらく経って、麻原彰晃こと松本智津夫著『超能力「秘密の開発法」』(大和出版 1986)という本を読み、これをきっかけとして、その数か月後の同年9月にオウム神仙の会に入会した。この当時の気持ちとしては、「前から少し気になっていたヨーガの教室に行ってみるか」という程度の感覚であった。
(中略)
そしてオウム真理教の教義のどこに惹かれたかという問いには、「一番惹かれたのは、やはりそれまでの自分の、自分の考えてきたことなどとの関連から、松本が言っていた死後の世界に関する教義、あるいはそれを超越する道があるという部分」で、自分は「漠然としたイメージしか持っていなかったわけですが、それが非常に明確な形で提示してあった」と答えている。
そしてオウム真理教と原始仏教の教えとの共通性なども合わせ、その教義については「元々あったものを現代に復活させた」「正当性のあるもの」という印象を持ち、松本智津夫が説く教えは正しいものであるという強い確信を持つようになった。
このような経過から考えると、オウム真理教の教義は豊田が幼少期より持ち続けていた死への興味に対する解答となるものであり、また死への恐怖に対する救いとして、豊田の中に容易に入り込んできたものである。
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